
映画「羅生門」(芥川龍之介原作・黒澤明監督 1950年)のユニバーサル上映会が3月20日、滝野川会館(北区西ケ原1)で行われた。
同イベントは、北区内に建設予定の「芥川龍之介記念館」(仮称)開設の機運を高めるため、芥川龍之介の生誕月である3月に「芥川龍之介生誕祭」として、北区と北区文化振興財団が開いたイベントの第2弾。1500人以上の参加希望者があり、抽選で選ばれた約300人が来場した。
上映に当たっては、全国でも珍しい常設のユニバーサル映画館「CINEMA Chupki TABATA(シネマ・チュプキ・タバタ)」(東田端2)の協力を得て行われた。音声ガイド、日本語字幕付きでの上映、あらすじの点訳の配布、駅と会場間の付き添いのほか、車いすのまま鑑賞できる座席を設け、視覚・聴覚などの障害のある人も共に鑑賞した。
アフタートークとして、国立映画アーカイブ主任研究員の岡田秀則さんが映画「羅生門」の解説を手話・日本語同時字幕付きで行った。作品には大量の水が使われたため、近くの水道の水が出づらくなってしまったなどのエピソードを紹介。トーク中、ベネチア国際映画祭金獅子賞トロフィーレプリカをサプライズで公開した。これは、芥川が「羅生門」の原作者であることから遺族に贈られた品。芥川家から見つかったものを、約70年を経て初公開した。会場には芥川のひ孫・芥川奈於さんの姿もあった。
ロビーでは、芥川の好物だった「うさぎや」の喜作最中のほか、船橋屋のくず餅など、芥川作品や手紙に登場する老舗和菓子の詰め合わせを販売。170セットが完売した。
同記念館・館長補佐の石川士朗さんは「芥川龍之介原作映画のユニバーサル上映は、現在田端にある2つの施設(田端文士村記念館とシネマ・チュプキ・タバタ)を生かした試みだった。芥川家からベネチア国際映画祭金獅子賞のトロフィーレプリカが見つかり、約70年ぶりに初公開できたことは、映画界・文学界にとって有意義なこと。この催事では、映画を楽しみ、解説で学び、味覚でも芥川龍之介を感じてもらい、生誕祭にふさわしいものになったと思う」と振り返った。