
王子の居酒屋「みちしるべ」(北区王子1)が7月10日、「和歌山市へのみちしるべ」プロジェクトを始めた。
同店は、王子駅周辺で地域の生産者の食材を生かした飲食店6店を経営する「みのりプロジェクト」社長の梶谷篤史さんが、自社が運営するイタリアンレストラン「トラットリア みのり」向かいの空き店舗を居抜きで借り、日本酒と小鍋を提供する居酒屋として2024年3月に開店した。
同プロジェクトは、北区の担い手を育てる「みらい塾」で同じグループになった梶谷さんと山田浩太さんが企画した。山田さんは公務員の傍ら、「しぶさわくんFM」のラジオ番組で「公務員ただいまはみ出し中!」のパーソナリティーを務めており、和歌山市との連携事業でかねて親交を深めていた同市シティプロモーション課の辻本真生さんを番組ゲストに迎え、和歌山を訪れる約束をしたという。
「江戸時代から桜の名所の一つになっていた王子駅前の飛鳥山公園の桜は、紀州藩5代藩主から8代将軍になった徳川吉宗の命で植えられたものであるなど、歴史的に北区と和歌山にはつながりがあり、災害時の協定や桜の枝交換など取り組みを行ってきた。もう一歩踏み込んだ取り組みができないかと考えていたところに、梶谷さんと出会ったことで、新しい公民連携の形が見えた」と山田さん。
同プロジェクトで提供する限定メニューを創作するに当たり、山田さんや辻本さん、同市農林水産課職員の調整で、5月に梶谷さんが和歌山市の生産者の8カ所を訪れ、直接仕入れることができる食材を見つけ、メニュー化を進めたという。
辻本さんは「梶谷さんが直接産地に来てくれたことが大きかった。市の食材は主に関西圏に卸しているが、北区との縁で自治体同士の連携が生まれ、東京の民間事業者を市内の生産者に受け入れ、メニュー開発まで行う体制が取れた」と話す。
メニューは、「釜揚げしらす おろし大根」(580円)、「岩出産黒あわび茸(たけ)の地酒蒸し」(880円)、「白甘鯛(アマダイ) 昆布締め」(1,480円)、「紀州一本釣りカツオ たたき 梅の香り」(1,280円)、和歌山県産レモンを添えた「灰干しサンマ焼き」(1,480円)など。ドリンクメニューには和歌山市の地酒(580円~)もそろえる。
梶谷さんは「今回のプロジェクトでは、産地直送で仕入れた食材から作ったメニューになるので、天候に左右されて、欠品になったり、メニューを変更したりすることもあるが、それも『天からの実り』なので、産地とコミュニケーションを取りながら、今、手に入るものを大事にやっていきたい」と話す。
営業時間は17時~翌3時(日曜は15時~23時)。水曜定休。9月末まで。