東京都北区ゆかりの詩人・萩原朔太郎の直筆原稿や資料など計6点が田端文士村記念館(北区田端6)に寄贈されたのを受け、芸術文化の進展に多大な貢献をしたとして10月6日、花川與惣太北区長から感謝状が贈られた。
初公開資料の展示風景(寄贈された朔太郎の直筆色紙「みちゆき(部分)」)
寄贈された資料は、萩原朔太郎の処女詩集「月に吠える」に所収された詩「見しらぬ犬」の原稿や直筆資料など。孫の萩原朔美さん、榎本了壱さん、石原康臣さんが寄贈した。
萩原朔美さんは「朔太郎の書く文字は、若い頃の丸文字から年を追うごとにペン先を滑らすような鋭角的な文字に変わっていった。文字は心象を表しているので、その変遷をたどり味わってほしい。朔太郎の詩を再考すること(過去を振り返ること)は未来を創ることにつながる」と話す。
榎本了壱さんは、寄贈した作品「見しらぬ犬」について、「不思議な詩、原稿には修正が入っているが、これは心境の変化の表れ。展示では特にそこを見てほしい」と話し、「言葉の世界は詩人から始まった。言葉の原点をもう一度、朔太郎の詩を通して感じてほしい」と語った。
資料は同館で10月1日から開催中の「朔太郎・犀星・龍之介の友情と詩的精神~タバタニサクタロウキタリ~」で公開。同展は、今年で没後80年を迎える詩人・萩原朔太郎を記念し、全国52カ所の文学館や美術館、大学などが連携した「萩原朔太郎大全2022」の一環で企画された。口語自由詩を確立した萩原朔太郎の処女詩集「月に吠える」所収の詩「見しらぬ犬」の原稿と、室生犀星が亡き親友・朔太郎への思いをつづった全集未収録の貴重な原稿「えらさといふこと」を公開している。
同館の石川さんは「この機会に北区の偉人である萩原朔太郎の詩の世界をぜひ知ってほしい。萩原をもっと知りたいと思った方は、当館と北区立中央図書館、北区立田端図書館を回るスタンプラリーも行っているので、そちらも参加してほしい」と呼びかける。
開館時間は10時~17時。月曜・祝日の翌日休館。入館無料。2023年1月22日まで。