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十条の老舗定食店「味の大番」、生涯現役目指す店主がリニューアル

「味の大番」看板娘の山崎ゆきえさん

「味の大番」看板娘の山崎ゆきえさん

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 十条の老舗定食店「味の大番」(北区上十条2)が8月1日、店内を改装しリニューアルオープンした。

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 店名の「大番(おおばん)」は、同じタイトルの古い日本映画から名付けたもの。映画は田舎町から出てきた男が東京で一旗揚げる物語。店主の山崎清さんは東京都大田区の生まれで、田舎町の出身ではないけれど、自分も十条で一旗揚げようと、映画にあやかって同じ名前にしたという。

 「俺は、店を開いた1964(昭和39)年と今年、店のテレビで東京オリンピックを2度観戦した」これが山崎さんの最近の口癖だが、創業してから60年近くが経過し、山崎さんの年齢も80歳を超えた。豚ロース肉と豆腐とたっぷりのニンニク粒を使った名物「からし焼き」はもちろん、焼き魚、さばのみそ煮、お刺し身、とんかつにフライ、そして白いご飯にみそ汁に漬物など、数々の定番メニューの味こそ変わらないものの、以前と比べて体力的にはさすがに「落ちてきている」という。十条の街の再開発の影響で、既に立ち退きも予定されている。

「家族だけでやってきた店にとって、働き手の高齢化も立ち退きも大問題。ここで閉店という選択肢もあったが、仕事をすることが生きることそのものでもある父の、店を続けたいという気持ちに応えて、一日でも長く営業するために店内のリニューアルを決断した」と、共に働く長女の山崎ゆきえさんは言う。

 改装前にはあったテーブル席を全て無くし、改装後はL字型のカウンター席だけにした。定員20人で、通常は10人前後だった客数は、定員9人で実質7人ほどにまで減らした。それに伴って売り上げも下がったが、調理場からテーブルまで料理を運ぶ手間はなくなった。店の一番奥にあった調理場も手前に移動し、食器の洗い物はカウンター内のシンクでできるように。休憩用のスペースも設け、作業的にはかなり楽になったという。

「店内の様子が急に変わって、びっくりする常連さんもいた。でも、ありがたいことに改装後も通ってくださっている。立ち退きの予定もまだ不透明だし、いつまで続けられるかは分からないが、父にとってこの店は生きている証しのようなもの。最後まで意地を通し、生涯現役を貫いてほしい。お客さまには、これまで通りのメニューと、おいしいご飯とみそ汁を召し上がりたくなったら、ぜひお越しいただければ」と、ゆきえさんは思いを語る。

 現在の営業時間は11時~14時30分、17時~20時。水曜と第3木曜定休。

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