北区十条にある「十條湯」(北区十条中原1)が現在、銭湯と併設喫茶室の存続を目指し、クラウドファンディングで協力を呼び掛けている。
十條湯は北区十条エリアに唯一残る銭湯で、1948(昭和23)年に創業。現在は2代目の横山宗晴さんが社長を務めているが、銭湯の多くが経営悪化や後継者問題などで廃業を余儀なくされる中、十條湯も同様に存続が厳しい状態が続いていた。
そうした中、銭湯継業を専門としている「ゆとなみ社」(京都市下京区)が2020年9月に経営支援を決め、同社から湊研雄さんが出向社員として赴いている。湊さんは銭湯好きが高じてこれまでに台東区や川口市の銭湯で働いていた経験があり、十條湯へは客として通っていたと言う。川口市内の銭湯を退職した後、次の仕事を探している際に十條湯存続の危機を知り、手伝いを始めたのがきっかけで、現在では店長として立て直しに関わることになった。
「社長もおかみさんも体調を崩してしまい、新型コロナがまん延し、資金繰りも八方ふさがりになってしまったが、何としても十條湯を残したいと思った。十條湯の強みは地下水をくみ上げた、まろやかな水風呂、サウナ、中2階スペースのサウナ休憩所や他の銭湯にはあまりない喫茶室があることだが、全て生かし切れていなかった。まずはサウナをテコ入れし、少しずつ十條湯の認知を上げていったが、次のステップとして課題の多い喫茶室改装のための資金調達が厳しい状況になったので、クラウドファンディングで資金を募ることにした」と湊さんは言う。
喫茶室改装に至った経緯は、その認知度が低かったり、開店当時のままの内装だったりと、本来なら癒やしの空間であるはずの場所がそうではなかったためだという。湊さんは「喫茶に新メニューを追加する計画も進めており、専属メンバーも加入した。喫茶室を改装することで入浴客の休憩所として活用し、銭湯に併設しているコインランドリーの待ち時間での利用や喫茶室だけの利用増加を目指すことで、ゆくゆくは銭湯目的でない利用客が銭湯利用をするようになれば相乗効果が得られる。喫茶室の店名は社長が決めたもので、浴室から喫茶まで続いていくイメージから女湯のタイル絵と同じ『喫茶 深海』とした」と話す。
クラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」で資金を募っており、リターンにサウナ入浴券、ドリンクチケット、オリジナル手拭いや銭湯一日貸し切り権などを用意。目標額は現在、ネクストステージ挑戦中で600万円。終了日は7月18日。