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80年の時を刻んだ十条の銭湯「春日湯」 最後の姿に懐かしむ声

番台に立つ森崎さんと企画した土屋さん(中央)と吉柴さん(左)

番台に立つ森崎さんと企画した土屋さん(中央)と吉柴さん(左)

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 JR埼京線十条駅近くにある銭湯「春日湯」(北区上十条1)で10月11日、「さいごの入浴」が開催された。

春日湯外観

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 熱湯、岩風呂で地域に根付いていた同湯は、担い手がいないことから2014(平成26)年5月に廃業し、今年11月から解体される。戦前から残る建物を「何か見える形に残したい」という思いから、Boundary代表の吉柴宏美さんとフリーランスPRの土屋明子さんがイベントを企画。この日は、近所の住民のみならず区外からも客が訪れ、同湯を経営していた森崎静江さんが6年ぶりに番台に座り、客を出迎えた。

 脱衣場では、銭湯で使われてきたロッカーの鍵や床板を装飾し、写真で残すワークショップや浴場でパーカッションのリズムに合わせたダンスワークショップ、森崎さんの「春日湯の思い出」語りが行われた。

 森崎さんは1966(昭和41)年に同湯を継ぎ、夫と二人三脚で歩んできたが、1989(平成元)年に夫が他界。以後、廃業するまでの25年間、家族や客、地域に支えられて番台に座り続けたという。「番台が大好きで苦に思うことはなかった。人とのつながりが何より大事だった」と森崎さん。

 近所に住む50代の女性は「家に風呂が無かった幼少期によく来ていたが、大人になってからは疎遠になっていた。今日は久しぶりに来て懐かしい」と目を細め、板橋区在住の40代男性は「立派な岩風呂はこの辺りでは珍しい。庭もきれいに残っていたことに驚いた」と話していた。

 企画した土屋さんは「偶然の出会いから、ご近所や家族連れ、銭湯マニアの方までたくさんの方に来ていただき、同じ空間を過ごしたことをうれしく思う」と笑顔を見せる。

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