提供:北区ビジネスプランコンテスト事務局 制作:赤羽経済新聞編集部
新しいビジネスを始めて限られた予算の中で、自分のビジネスを知ってもらおうと思った時に、発表する機会をネットで調べみると、ビジネスアワード、ピッチイベント、ビジネスプランコンテストなどいろいろな情報が出てくると思います。
でも、自分のビジネスプランはどれに応募したらいいのか、そもそも応募する意味がわからない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、数あるビジネス系のイベントで東京都北区という自治体が主催になっているビジネスプランコンテストについて詳しく聞いてみました。
お話を聞いたのは、今年2年ぶり5回目の北区ビジネスプランコンテストを主催する東京都北区産業振興課の佐藤隆宏さん。
そして、第1回の同コンテストで最優秀賞を受賞した岩淵家守舎の織戸龍也さん、第2回で最優秀賞を受賞した日本産後ダイエット協会の新井雅美さんにお話を伺いました。
佐藤さん:北区とゆかりの深い渋沢栄一翁の志を受け継ぐような起業家を育成する事業の一環として、2年に一度、北区が主催となって開催しています。このコンテストで、ビジネスを通じて地域経済への貢献を一緒に考えることができる起業家の方と出会いたいと思っています。
今回、お話を聞く織戸さんも新井さんもビジネスプランコンテストをきっかけに、区内で様々な形で活躍するお二人です。
織戸さん:僕が参加したのは、1回目だったので、そういったものがあるのは知らなかったし、北区に引っ越してきたばかりだったので、自分のやりたいことを資料にまとめて、区役所に相談に行ったりして、一緒にできる事ないですか、って話をしに行ってたら、ビジネスプランコンテストを紹介してくれたんですよね。
当時は、北区に来る前に住んでいたシェアハウスの大家さんに紹介してもらったリノベーションスクールに参加して、対象の敷地だった岩淵町に引っ越してきて活動し始めたときで、「自分たちのこれからの活動を知ってもらうこと」と、「地域の人とのつながりをつくる」きっかけになるんじゃないかと思って応募しましたね。
新井さん:私の時は、2回目だったんですけど、ビジネスプランコンテストの存在自体知らずに、北区がやっていた事業計画書作成セミナーに際に参加して、その最終回でビジネスプランコンテストの紹介があって知ったんですけど、自分のビジネスプランを公表するなんて、全然勇気がなかったです。でも、隣に座っていた鹿野さん(第2回のビジネスプランコンテスト ファイナリスト受賞者)が「お金もかからないし、出ない手はないよね」って言ってくれて、それで出ようねってなったんです。
当時は、任意団体で活動していて法人化を検討していたんですけど、どうしたらいいかわからないなっていう状態。
それで、毎週土曜日は、パーソナルトレーニングのお客様の予約が入っていただけど、土曜日を空けて、今後について色々と考える日にしようと決めたんですよね。そうしたら、志茂駅で事業計画書作成セミナーのチラシを見つけて、「えええ、何、タダで教えてくれるの事業計画の作り方」って思って、参加したんです。
セミナーに参加している人が全員応募すると思っていたら、全員ではなかったんですよね。
全員事業計画を作りに来ているのに、なんで全員じゃなかったんだろうと思ったんですけど、多分、セミナーに参加して事業計画を作ってみたら、考えが甘かったなと思って、挫折した人もいたと思うんですよね。
でも、ある意味それでいいと思うんですよね。
会社勤めしている時とか、事業を始める前にちゃんと計画を作ってそれからはじめてねって思う。
佐藤さん:確かにそうですよね。ビジネスをしようと考えている人それぞれに環境や事情もあると思うので、自分がどういう動機で、どういうビジネスを展開していくつもりなのかを見つめ直すに機会にもなりますよね、事業計画を立てるというのは。
新井さん:本当に計画は大事で、ビジネスプランコンテストにも佐藤さんが言うように自分がどういう動機でビジネスを展開していくつもりなのか出ますよね。ビジネスプランコンテストでは審査員やイベントに参加した人に発表する機会があるので、発表して人の心を動かすぐらいものっていうのが、やっぱり成長していくと思う。
ちゃんと、自分の想いを言語化できないと発表したときに人に響かないし、事業計画にも落とせてないと思う。
だから、事業計画書にビジネスプランを落として、言語化できていることってすごく大事。
佐藤さん:ビジネスプランを作る系のセミナーでも、講師の先生がたくさんアウトプットしてくださいねってよく教えるんですよね。ビジネスプランコンテストの2次審査がプレゼンテーション審査なので、その前のブラッシュアップセミナーでは、ビジネスプランを初めて聞く人、その業界や分野に詳しくない人でもわかるようにプレゼンテーションの練習をしていただいています。ビジネスプランコンテストをきっかけに、自分のプランを言語化できるとその後のビジネス展開もうまくいくんだろうなと思いますね。
織戸さん:そうね。やっぱり、資料で可視化できることと、言語化できているというのはすごい大事。
新井さん:織戸さんの資料、すごいもんね、可視化率が。
織戸さん:めちゃめちゃ何度も書き直してます(笑)
新井さん:そうだよね。めちゃめちゃ書いてるとか、めちゃめちゃやってるとか大切だけど、パッと資料見ただけの人には、裏でめちゃめちゃやってることとか見えないじゃない?だから、彼だからできるとか、あなただからできるとか言われることもあるけど、そんなことないぞっても思うよね。
ビジネスを始めたら、遅かれ早かれ、取引する前にプレゼンすると思うんだけど、はじめて、プレゼンする人の資料は、細かい字がビッシリで・・・・
織戸さん:それを見てプレゼン始めちゃう人って、まだ自分の言葉になりきってないケースが多いと思う。他の人のセミナーとかプレゼンを見に行って、そういう目線で聞いてみると、情報の見せ方でも、写真一枚でこれだけしゃべる人がいるとか、映像から伝わるものってめちゃめちゃあるよねとか、言葉一言に対しても補足すればそれでいいよねとか見えてくるよね。
そういう勉強も大事。発表する資料なのか、配布する資料かでも変わってきますね。
ビジネスプランコンテストもそうだけど伝えるって、最後はやっぱり気持ちと内容がちゃんと整っているかどうかが自分の言葉でしゃべれるかどうかだと思うから、台本を読んでるようじゃ共感を生むのは無理だよねっていうのは確か。
新井さん:ビジネスプランを考えるときに、自分が誰と仕事をしていきたいかは、すごく大切だから、事業計画書で5年後、10年後を見るということもすごく大事。その上で、成長する中でどんどん見方が変わってきて当たり前。時代も変わるから。私も5年やってきて今年は成長のために新たな挑戦をしようと思ってる。
織戸さん:確かに、そのフェーズ、フェーズで考えることがあるなと思っていて、勢いがあるときはその流れでやりたいことって、バーッと広げるけども、その中で取捨選択しながら、ブランディングをどうしていくかみたいなのを整えるのが3年目。それで、5年目とかでやることも変わってきたり、自分達の年齢もそうだし、周りの年齢も変わってくる中で、訴求の仕方や波及効果などを再考するというようなことはめちゃくちゃある時期かなと思いますね。
佐藤さん:3年目や5年目あたりって一般的にそういう時期になってくるんですか。
織戸さん:テスト&エラーしながらの1年目、2年目でちょっと収支の見通しが見えてきて、3年目でどうしようかなと考えだして、5年目ぐらいで大きく描いてみたりという感じはありますね。
新井さん:ビジネス交流会とかに行って、5年やってますという話をすると、まずすごいですねって言われるんですよ。よく生き残りましたねみたいな(笑)あ、そうみたいな感じなんですけどね。3年で閉めちゃう人が圧倒的に多いよね。
佐藤さん:3年が鬼門なんですかね。
織戸さん:30%ぐらいは廃業すると言いますよね。
新井さん:やっぱり、忍耐とか想いとかで、経営の緊張を保っていられるのが、3年ぐらいなんじゃないですかね。3年目で見直していかないと、同じことをやっていても腐っていくだけって感じはしますよね。
佐藤さん:そう考えると創業支援と一口に言っても、起業のステージとしてシード期とか色々ありますけど、起業直後の人なのか、2、3年やっている人なのか、5年やって最初の事業が安定してきた人なのかによっても、それぞれ支援のあり方も違いますね。
新井さん:違う、違うよ。
佐藤さん:それくらい、きめ細かな支援がこれからできていったほうがいいんだろうなと。仮説ですが。
新井さん:創業支援も大切だけど、継続支援も大切じゃないですか。私、この間、東京都の創業支援のところに相談に行ったら、もう5年だから支援がないって言われて、「おっと、これは誰に頼ればいいだ?」と思って。思いついたのが、ネスト赤羽のインキュベーションマネージャーの永沢さん(笑)
創業の時から相談に乗ってくれているような地元の自治体の創業支援窓口の人は親身になってくれると思うんですよね。
そういう、地元ならではというか、北区はそういう温かさが創業支援にありますよね。
佐藤さん:そういうところも価値を感じられる部分なんですね。
新井さん:私的にはね。
織戸さん:新井さんがメンター的に永沢さんの話を出したように、創業するタイミングの時には、コミュニティビジネスの創業支援ネットワークのアドバイザーが地域の窓口として機能しているかと思いますが、創業後の人たちが地域で伴走できるメンターが今後は必要だと思いますね。
同時にそれは経営者同士でしか話せない悩みみたいなのが出てきたときに参加できるコミュニティーみたいなものもあるといいですね。
新井さん:起業して3年とか5年たって自分の次のステージに行くと、そこでは新人なんですよね。例えば、売り上げが5倍になった、10倍になったとなると影響力も抱える人数とかも大きくなってくる。そうすると、組織をどうするかっていうことを考えると、そのステージでは新人になるので、次のステージのメンターを探さなきゃってなると、そこであきらめちゃう人もいますよね。
織戸さん:そうですね。自分のことを俯瞰してみれるようになるところまでいくにの5年ぐらいかかるんじゃないかと思うんですよね。
新井さん:私は法人を設立する前に挑戦して、最優秀賞を取った翌月に法人にしたんですけど、今までご縁がいただけなかった人とご縁をいただけるようになったし、名刺に北区ビジネスプランコンテスト最優秀賞受賞と書くと、やっぱり自治体名が載っているともう信用証明になっている感じはありましたよね。
佐藤さん:そういう点は、自治体は強いんだろうなとは思っているので、うまく使ってくれるといいなと思いますね。
新井さん:その後、その自治体でどういうことをやってきたのかというのが、1つの実績になりますよね。
佐藤さん:自治体としても、やっぱり何にも関係値の無い事業者さんと何かを一緒にやろうというのは難しい面があるんですが、区が主催するビジネスプランコンテストで受賞しているなど実績があると協力関係を築きやすいという面もあると思っていて、そういったパートナーシップを組めるようなプレイヤー探しという意味でビジネスプランコンテストは有効だなと思いますね。
新井さん:そうだよね。地域でビジネスを始めたい人は、参加するといいと思うよね。
佐藤さん:北区の地域性というのも評価項目に入っているので、そこをうまくとらえて、この機会に北区のことを知ってもらうというのもありますし、一緒に北区のことを考える人にビジコンを受賞してもらえると嬉しいですね。
新井さん:地域のことを考えるきっかけになるよね。
織戸さん:なるね。地域のことを知るっていうことを考えると、やっぱり、自治体としての北区が求めていることって何だろうって調べるぐらいじゃないと地域のことって見えてこないと思う。ビジネスプランコンテストをきっかけにちゃんと北区の情報を取りに行く人が増えて、かつ、産業活性化ビジョンだったりとかにも、みんなが関わったり、理解して、この地域で仕事をしていくということをちゃんと考えてほしいなと思いますね。
織戸さん:継続するための事業資金だったり、何かスタートの時って買いたいものを1ランク下げてしか買えなかったとかがあったので、ランクアップして購入したりとかしたかな。もちろん新規開発費用だったりとかのちょっとでも足しになったりとかもあると思うけども。僕らはマルシェとかやってたりするから、そういうのに対しての手伝ってくれた人にあんまり還元できるものがなかったりしたのもあるので、みんなで美味しいものを知ってそこで関係値作る企画なんかを考えて、農家さんを呼んで話を聞くための謝金に充てたりとか、今まで無償で来てもらうしかなかった人とかにも還元できるような次につながるお金の使い方はしたかな。
佐藤さん:そうなってくると50万じゃ全然足りないですよね。(笑)
織戸さん:全然足りないけど、それを元手にどんどん関係値を横に広げてこうっていうのがあったので、感謝を伝えると同時にね。そこに関わってくれてる人たちがいたからこそ最優秀賞を取ったよっていう風なところに使わせていただきました。まとまって50万でどう使いましたって多分あんまりわかんなくて気づいたらなくなってた。
新井さん:50万円って創業資金っていう風に考えたら本当に全然足りないと思うんですよ。でも自治体が主催して、実際にビジネス化するようなプランに出す金額としては、いい金額だよね。私は商標登録を取ったりとか、定款出したりとかに使ったのと、私もやっぱり今までお世話になった人たちに還元できたかなっていう感じですね。気がついたらなくなってましたよね。
織戸さん:そうですね、事業を始める際には、資金としてエンジン的なものも多少は必要。出だしのところで必要なエンジンみたいなのは多少あった方がやっぱり循環してくっていう方法にはなるのかなって思いますね。
新井さん:私はビジネス、起業するって自己表現の1つだなっていう風に思う。自分がなんでそのビジネスをしたいのか、そして、それが自分の人生と社会にどう影響を与えるのかっていうのを見つめる機会になると思うので、自分を見つめて自分が何で生きているかっていうところを見つめる機会にしていただければと思います。
織戸さん:結構気軽な気持ちでいろんな人に壁打ちしてもらうためでいいと思う。ただ自分の中での意思はしっかりと乗せて欲しい。趣味なのか仕事なのか、いろんな選択の連続で自分で決めたから頑張ろうってなってほしいと思います。
佐藤さん:これまで4回開催している中で入賞した方が、ビジコンをきっかけに活躍したり、受賞後も区と長く関係を続けてくれたりしていることが多くあるので、今回もビジネスプランコンテストを通して、これからの北区をつくっていくプレーヤーの人とつながりたいと思います。
ビジネスプランづくりやブラッシュアップのサポートなど、できる限りサポートするので、応募してみようかなと少しでも思ったら、ぜひチャレンジしてみてほしいと思います。