田端文士村記念館(北区田端6)が現在、11月で開館30周年を迎えたことを記念した企画展「古典的作品の再現者 芥川龍之介『宇治拾遺物語』から『千夜一夜物語』」を開催している。
同館がある田端は、元は農村地帯だったというが、東京美術学校(現・東京芸術大学)が開校したことをきっかけに、多くの文士・芸術家が移り住み文士村を形成した。同館は田端ゆかりの文士・芸術家の作品を展示や講演会などを通じて功績を次世代に継承するため、1993(平成5)年に開館。今年は施設工事のため一時閉館していたが、11月4日に再開。同展のほか、常設展も一部リニューアルして開館した。
記念展は、幅広い世代から認知があり、田端に長く暮らした人物として芥川龍之介をテーマに企画した。同館では、これまでも何度か芥川の企画展を開催してきたが、作品にフォーカスするのは今回が初めて。
幼少期から読書量の多かった芥川は、国内外問わず多くの古典文学読んでおり、古典文学を題材として執筆した作品が多くある。同展では、和漢洋の古典文学を題材にした芥川作品と当時の逸話が分かる資料などを展示。作品と芥川自身の魅力を全5章で紹介している。倉敷市蔵の「地獄変」(題材「宇治拾遺物語」)の原稿や長く未定稿とされていた「三つの指輪(環)」(題材「千夜一夜物語」)の講演速記録など、普段は見ることができない貴重な資料も閲覧することができる。
研究員の木口直子さんは「お勧めは、展示を一巡した後、もう一度序章を見ること。より理解が深まると思う。序章は、同じく田端に暮らした室生犀星が芥川について評した『芥川龍之介の人と作』の一部を展示している。犀星は、芥川の古典的な作品の再現について、『話をなぞるだけの再現ではなく、登場人物の人生や心の動きに焦点を当てて物語を再現している』と評している。心情を描いた作品だからこそ、私たちが読んでも共感できる作品が多いのだと思う。当展を通して、芥川作品を読み返したり、研究に興味を持ってもらえたりすれば」と話す。
開館時間は10時~17時(最終入館は16時30分)。月曜・祝日の翌日、年末年始は休館。入館無料。2月12日まで。