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滝野川「稲荷湯」でWMF「文化遺産ウオッチ」視察 歴史的建築と社会的価値を評価

稲荷湯外観

稲荷湯外観

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 滝野川にある銭湯「稲荷湯」(北区滝野川6)で11月19日、米ニューヨークの「ワールド・モニュメント財団(以下、WMF)」による「2020年文化遺産ウオッチ」伝達式と視察が行われた。

ワールド・モニュメント財団のダーリン・マクロード副理事(左)と稲荷湯の土本さん(右)

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 「文化遺産ウオッチ」は、緊急に保存・修復などの措置が求められている世界の文化遺産から同財団が選考を行い、リストに挙げた文化遺産についての保護活動の必要性を広く訴える取り組みで、1996年から隔年で行っている。今回は申請のあった250件以上の中から建築、文化遺産、文化財保存の専門家が審査を行い25件を選出。日本では「稲荷湯」と「岩松歴史的町並み」(愛媛県宇和島市)の2カ所が選ばれた。

 稲荷湯は1930(昭和5)年に建てられ、戦火から逃れたことで現在も戦前の面影を残している。浴場、母屋、従業員の住居として建てられた長屋などの建造物で構成し、外観は入り母屋造りの玄関とその上に破風(はふ)が重なる特徴を持つ。

 東京都生活文化局によると、銭湯は昭和40年代の最盛期には都内に2600軒以上存在したが、2018(平成30)年12月末現在、544軒と年々減少傾向にあるという。

 今回の選定に当たり、同財団のダーリン・マクロード副理事は「日本の都市部において地域社会の基盤となっている銭湯は高齢化社会で高齢者の孤立などが問題視されている中、銭湯のあり方が財団の価値観と合致した。歴史的・建築的価値だけではなく、銭湯は地域コミュニティーの一部であり、地域の支えがある事も評価された。都市部では銭湯が急速に減少している現状が印象的。その中で保存することが一層重要になってくる。地元の有志団体などと組んで実施するプログラムのため熱心な団体がある事も評価された」と話す。「私たちができるのは国際社会の注目を集める事。実際に文化遺産をどう活用するかは、地元のみなさんにかかっている」とも。

 稲荷湯5代目の土本公子さんは「これからも町会の皆さんや地域の皆さんと一緒に滝野川の町を大事にしていきたい」と笑顔を見せる。

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